【安全性対策】
結核

抗結核薬の予防投与

2007年4月に結核予防法が廃止され,結核対策は改正感染症法により進められています.この中で,従来のイソニアジド(INH)予防投与は「潜在性結核感染症の治療」と位置付けられています.潜在性結核に対する抗結核薬の予防投与の効果は100%ではないことに留意すべきですが,INH 予防投与の有用性を支持するエビデンスは存在します.胸部X 線写真で治癒所見あるいは不活動性所見を持つ28,000 名を以下のように各7,000 名ずつ4 群に分類しました.

  • @ INH投与なし
  • A INH12週間投与
  • B INH24週間投与
  • C INH52週間投与

5年間の結核発病率を比較したInternational Union Against Tuberculosis(IUAT)の成績では,結核発病率は,

  • @ 14.3%
  • A 11.3%
  • B 5.0%
  • C 3.6%

となり,INH予防投与の期間に準じて発病予防効果が高くなる結果を示しました.米国やカナダではINH300mg/日の9ヵ月間投与が勧められていますが,IUAT の結果ではBINH24週間投与群とCINH52週間投与群との間で発病予防効果(24 週間投与群65%,52 週間投与群75%)に有意差が認められなかった(χ2検定,0.20>P>0.10)こともあり,わが国の指針は6ヵ月間投与が勧められています.
ただし生物学的製剤投与のように結核併発危険因子を有する場合には9ヵ月間のINH予防投与も考慮されるべきです.なお,IUATの成績では,INHの服薬コンプライアンスの良好な症例では,発病予防効果が高いことが示されていますので,活動性結核治療の場合と同様に,潜在性結核治療でも抗結核薬の服薬遵守を推奨しなければなりません.

これらにより抗結核薬の予防投与は重要であると考えられ,画像診断で問題のない症例をも含めて,「結核発病患者との接触歴あり」,IRGA「陽性」,ツベルクリン反応「発赤20mm以上」「硬結あり」,胸部画像所見「異常陰影あり」など結核の既感染が疑われる場合には,抗結核薬の予防投与を行うことが勧められます).日本結核病学会予防委員会・治療委員会の潜在性結核感染症治療指針等では,抗TNFα製剤投与開始3週間前よりINH内服(原則として300mg/日,低体重者には5mg/kg/日に調整)を6〜9ヵ月行うことが推奨されています.
しかしながら,アダリムマブ投与症例においては、INH予防投与終了後に結核を発病した症例の報告があり,抗TNFα製剤投与中には結核に対する注意が必要となります(HUMIRA安全性情報市販後における結核発病症例の検討参照).

*IUAT Committee on prophylaxis. Bull World Health Organ 1982; 60: 555-564.

▼ 図.推奨される抗TNFα製剤投与時の結核予防対策

図.推奨される抗TNFα製剤投与時の結核予防対策

日本呼吸器学会(編). 生物学的製剤と呼吸器疾患 診療の手引き. 2014