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第6回 関節リウマチに対するどんな誤解が困りますか?

結果発表と専門医からの解説

関節リウマチ患者さんを対象としたアンケート調査
(アンケート期間:2010年2月2日〜2010年7月30日)

回答結果

  回答選択肢 回答者数(名) %
A 老人の病気だと思われる 87 60%
B 怠け病だと思われる 63 43.4%
C 不治の病と思われる 52 35.9%
D 遺伝すると思われる 44 30.3%
E 感染すると思われる 7 4.8%
F その他(記述) 16 11%

※パーセントは、総回答者数145に対しての回答率

監修者コメント

京都府立医科大学大学院 医学研究科 免疫内科学 病院教授
川人 豊 先生

関節リウマチはいまや珍しい病気ではありませんが,一般的にまだ誤解が多い病気かもしれません.

今回のアンケートで,最も多かったのは「老人の病気だと思われる」という回答でした.回答者の性別や年齢に関わらず,過半数を超える患者さんがこの誤解に困られていることがわかりました.
関節リウマチの発症年齢は40歳代が最も多く,4人に1人がこの世代で発症しています1).およそ4割の患者さんは,10代を含む40歳未満で発症していますので1),決して老人の病気ではありません.
老人の病気という誤解には,他の病気との混同があるのかもしれません.専門的には関節や筋肉,腱などに痛みやこわばりが起こる病気を総称して"リウマチ性疾患"と呼ぶこともあり,これには関節リウマチのほかに,関節に症状があらわれる様々な病気が含まれます.しかし,一般の方のなかには関節が痛い病気が"リウマチ"であるという誤解があり,全身に症状が出る自己免疫疾患の関節リウマチと,その他の関節の病気との違いが,理解されていないことが多いようです.特に,患者数が多い変形性関節症は,高齢の方に多く発症して関節に痛みがあらわれるため,関節が痛む"リウマチ"は老人の病気という印象を与えてしまうのかもしれません.
まず,関節が痛む病気でも,他の"リウマチ性疾患"と関節リウマチは全く別の病気であることを周囲の方に知っていただき,そのうえで,関節リウマチは子育てをしている年齢層での発症が多いことを伝えれば,老人の病気という誤解は解きやすいかもしれません.

次に多かった回答が「怠け病だと思われる」というものでした.全身の倦怠感や関節痛などのため動きたくても動けない患者さんにとって,この誤解は大変つらいことと思います.関節リウマチの痛みがどれほどのものか,朝の忙しい時間帯にこわばりのため思い通りに動けない歯がゆさなど,なったことのない人には想像し難いことかもしれません.かつては,関節がいずれ変形する病気と思われていたため,変形がなくても様々な症状に苦しんでいる患者さんがいることを知らない方もいます.
このような誤解に対しては,ぜひあきらめずに関節リウマチの症状とご自身の状態を説明し,周囲に理解を広めることを続けていただきたいと思います.外からはわかりにくいが全身におよぶ様々な症状があること,どのような動作が困難か,できないことは体調により変化もあることなど,特に身近なご家族に理解いただくことで,治療と日常生活において心強い味方になってくれることと思います.医療機関でもらえる関節リウマチについての冊子などをご家族にも読んでもらうと理解を得やすいかもしれません.
また,ストレスをためないためにも,心ない誤解は必要以上に気にせず,できることを楽しんだり,理解者や同じ悩みを持つ患者さんと日常生活の工夫を話し合うなど,よりよい生活を前向きに心がけていっていただきたいと思います.

「不治の病と思われる」ことを挙げた方も多く,特に50歳代以上の患者さんでこの誤解に困るという回答が多くみられました.現在では有効な治療薬が複数登場して症状や関節の壊れ・変形を最小限に抑えることも可能になってきましたが,治療薬が限られていた時代には残念ながら病気の進行が続いてしまう患者さんも多くいらっしゃいました.このようなかつての関節リウマチのイメージを持っている方が,高齢の方には多いのでしょう.
現在でも多くの患者さんにとって関節リウマチという病気とのつきあいは長いものになりますが,適切な治療で病気をコントロールし,将来にわたって普通の日常生活を送って行くことも可能な時代になりました.現代では,不治の病という表現は関節リウマチにそぐわないものになったといえます.
このような誤解を持つ方には,関節リウマチ治療は飛躍的に進歩しており,昔とは状況が大きく異なることをお伝えいただけたらと思います.

「遺伝すると思われる」「感染すると思われる」ということに困るという回答もありました.現在のところ,病原体による感染症とは明確には考えられていません.遺伝因子も20〜30%程度発症に関与していると考えられますが2),関節リウマチに罹患している方の子供が必ずしも関節リウマチになるとは限りません.遺伝するのでは,感染するのでは,という思い込みは,一般に病気に対して向けられる偏見としてよくあるものともいえます.

今回の結果から,病気自体に対する誤解に加えて,関節リウマチの痛みや不自由さが他人からはわかりにくいということも,患者さんを困らせていることが浮かび上がってきました.周囲の方とコミュニケーションをとってご自身の状態をうまく伝えていくことも大切となります.正しく理解されるためのヒントや情報を提供できることもありますので困ったときには医師や看護師に相談してみるのもよいでしょう.

1)日本リウマチ友の会 編. 2020年 リウマチ白書 リウマチ患者の実態〈総合編〉. p12
2)川人 豊. 日内会誌 2012; 101: 2824-2829.