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第7回 社会や家族に望むことは?

結果発表と専門医からの解説

関節リウマチ患者さんを対象としたアンケート調査
(アンケート期間:2010年7月30日〜2011年3月31日)

回答結果

  回答選択肢 回答者数(名) %
A 病気を理解してほしい 112 70.4%
B 精神的なサポートがほしい 54 34%
C 育児、家事を援助してほしい 50 31.4%
D 経済的に援助してほしい 99 62.3%
E バリアフリー化を考えてほしい 39 24.5%
F その他(記述) 14 8.8%

※パーセントは、総回答者数159に対しての回答率

監修者コメント

三重大学医学部附属病院 リウマチ・膠原病センター 教授
中島 亜矢子 先生

関節リウマチの影響は,痛みや関節の変形のみにとどまりません.日常動作に不自由が生じたり,体の負担を少なくするために仕事を調整したり周囲に手伝いを依頼したりする必要もでてきます.定期的な通院や医療費などの時間的・経済的な負担も増加します.また,仕事や家事などを思うようにできないことで,周囲に気兼ねしたり,自分を責めてしまったり,さらには怠けているといった誤解を受けたりすることもあり,患者さんは多くの不安や悩み,葛藤を抱えていらっしゃるのではないでしょうか.
このような関節リウマチによる負担は,患者さん一人で背負うのではなく,家族や社会で共有し,患者さんが周囲と良好な関係を保ちながら前向きに暮らしていける社会にすることが大切だと思います.

今回のアンケートで「病気を理解してほしい」と望む患者さんが多かったのも当然のことと思います.
関節リウマチは全身に影響する自己免疫疾患であるのに関節のみの病気であると誤解され,疲労のしやすさや倦怠感,微熱や貧血,肺炎など様々な症状が患者さんに表れることが理解されていないことが多いようです.このような病気の特徴について周囲の理解を得ることが長い療養生活を充実したものにするための鍵ともいえるかもしれません.関節リウマチについての公開講座やWebサイト,医療機関で配布している冊子などを利用し,まずはご家族に理解を深めていただけるよう働きかけてみてはいかがでしょうか.実際,ご家族が関節リウマチという病気を理解してくださったことで以前より協力的になり,家事などを手伝ってくれるようになったという声を患者さんから伺うこともあります.

「精神的なサポートがほしい」と望む方も多く,中でも20代の患者さんにこの回答を挙げられる方が多い傾向がみられました.関節リウマチはご高齢の方の病気という誤解も一般的にはまだ多く,また外見からは痛みや動作のしづらさなどはわかりにくいため,特に若い方は周囲の無理解に直面することも多いと考えられます.さらに,就職,結婚や出産・育児といった人生における様々なイベントを前にして不安や葛藤を抱えてしまいがちです.しかし,このような感情やストレスをためてしまうことは病気に悪影響を及ぼすといわれています.不安や葛藤などの感情を心の中にためてしまうことなく,家族や友人に話していくことも大切だと思います.自分の状況やどんなことで悩んでいるかを周囲と話し共有することで,理解が得られより良い関係を築いていくことにもつながります.
また,長く続く痛みや不安は患者さんを抑うつ気分に陥らせる危険性もあります.気分の落ち込みに対しては時として医学的なサポートも必要です.不安や悩みは一度 医師や看護師にも話してみるといいでしょう.医師や看護師はたくさんの患者さんと接してきた経験があり,解決の糸口となるようなアドバイスを得られるかもしれません.

今回のアンケートで「経済的に援助してほしい」と望む声も多いことが明らかとなりました.特に,仕事に就いていない方でこのような回答が目立っていました.
『2015年リウマチ白書』(日本リウマチ友の会)によると,リウマチのために職業生活への影響を受けた患者さんの多くが,休職や退職をしたり,事業を廃業したり,就職を断念したと答えています.病気のために収入が減少してしまうことで,経済的に患者さんの療養生活が困難になることは避けなければなりません.一方で,生物学的製剤などの治療薬は高度な技術で開発されているため費用が高く,このことも患者さんの経済的な負担になっていると考えられます.現在,関節リウマチ患者さんが利用できる様々な公的支援制度があります.まだ利用されていない方は,ぜひ関係窓口に確認なされてみるとよいでしょう.

最近では,治療法の進歩により病気をコントロールすることが可能となり,仕事や趣味をやめずに発症前と同様の生活を続けていける患者さんも増えました.関節リウマチ患者さんが,周囲の方から病気の理解や精神的なサポートを得て,適切な支援のもとに至適な関節リウマチ治療をお受けいただくことができるよう,私たちも努めてまいります.